ご挨拶

江石 清行

九州大学精神科では、桜井図南男先生、中尾弘之先生、田代信維先生の教授時代を通して、神経症と葛藤の研究が精力的に行われてきました。この伝統に恥じない日本不安症学会学術総会を開催したいと思います。

第9回総会のテーマを、「不安と強迫~そのスペクトラムの病理と治療~」としました。精神病理、神経基盤、治療にわたり、強迫症OCDの研究が進み、DSM-5ではOCDが不安障害(DSM-IV)から独立しました。その流れをおってOCDの実像を明らかにしつつ、両者の共通点と差異を浮かび上がらせたいと思います。

操作的診断では、不安症との境界を明確にするために、不安という症状は、他の疾患の診断基準から可能な限り外されているようにみえます。そのため、他の疾患は不安を伴わない、という錯覚を生じてはいないでしょうか。本総会で焦点をあてるOCDはもとより、統合失調症、うつ病、ストレス因関連症群、身体症状症など、不安は精神疾患を横断してみられる現象です。DSM-5になり、うつ病・双極性障害の特定項目として「不安性の苦痛を伴う」が設けられたのはもっともなことですし、遠回りしたなという感さえあります。

不安の治療には精神療法が欠かせません。治療者には、行動療法、認知療法、森田療法、力動学的精神療法のエッセンスを縦横に、そして適宜選択して、応用できることが求められます。総会では、講演で各種精神療法に触れ、ワークショップを通して技法を体得して頂きたいと思います。

神経症の概念は、不安、強迫、抑うつの病理に加えて、今や古典的な病名となったヒステリー(解離と転換/変換)を含んでいました。不安、強迫、抑うつの研究が進んだのに比べ、ヒステリーの病態は未だ闇の中に有り、有効な治療法が待たれています。そこで、欲張って、ヒステリーを再考してみたいと思います。総会ポスターのデザインに、かの「シャルコーの臨床講義」を用いたのもこのような意図によるものです。

早春の筑紫は梅の花で飾られます。さらに、壱岐や対馬にも足をのばして、防人の史跡を訪ねてはいかがでしょう。

一同、皆様のお越しを心よりお待ちしています。

平成28年、盛夏
神庭 重信

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